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契約書のツボ(2)  商品売買契約書    by あどみん編集部

取引基本契約
商品売買契約
システム開発契約
秘密保持契約
業務提携契約
代理店契約
ソフトウェア使用許諾契約

 「商品売買契約書」
とは、商品を売買するときに締結する「単発」「一回こっきり」の契約書で、既に取引基本契約を締結済みの場合は、簡便な「注文書」と「注文請書」で代用してしまうケースがほとんどです(注文書や注文請書も契約書に変わりはないのです)。
 契約書を作成したり、内容を審査したりする際の重要なポイントとしては、以下のものがあります。
 なお、取引基本契約等、包括的な契約書ですでに合意されている内容については、(その内容を変更するものでない限り)あえてここで再度規定する必要はありません。
Point 1 商品の内容(品名)・数量は明確ですか?
  • 取引条件のなかでは、もっとも基本的な事項です。契約時に具体的かつ明確に規定しておきましょう
Point 2 商品の引渡場所は明確ですか?
  • これも基本的な取引条件の一つですので、しっかりと規定しておきましょう。
  • なお、この記載がない場合は、不特定物(一般の代替性のある商品)の場合は買主の営業所または住所、特定物(代替性のない商品)の場合は契約時に商品があった場所が引渡場所になってしまいます。
Point 3 納入費用はどちらが負担するの?
  • 契約書に特約ない場合は、法律上商品の納入にかかわる運送費用や梱包費用等は売主が負担することになっているので、これで本当にいいのか検討しましょう。
Point 4 代金の支払条件は明確ですか?
  • 「現金払い」「銀行振込(納入後何日以内?)」「手形払い(サイトは何日?)」・・・。
  • 「基本契約に支払条件がすでに規定されているだろう」と思いこんで、支払条件が曖昧なまま注文書&注文請書で取引をしてしまうケースが結構あります(個別の取引の際にいちいち基本契約を引っ張り出してくる人なんていませんし、注文書&注文請書にいちいち取引条件を規定する人もいません)。売主は気を付ける必要があります。
Point 5 検査(検収)期間は確定期間になってますか?
  • 買主がダラダラして検査期間が不当に引きのばされた場合(お金を払いたくないため意図的に先延ばししているのでしょうが...)、代金の回収が遅れるなど不測の損害をこうむる可能性があります。
    「商品引渡しの後○×日以内に検査を行う」と定めておき、「この期間内に検査結果の報告がなければ、検査に合格したものとみなす」というような特約が必要です。
  • 逆に買主は、検査遅延によって売主に生じた損害について賠償の責めを負うなどのリスクを負担することになるので、「実施可能」な合理的な期間を設定する必要があります。
Point 6 「不可抗力免責に関する特約は?」
  • 法律上、納期が遅れたときの責任を問われるのは売主に過失のある場合に限定されます。でも念のため、天災地変などの不可抗力(より具体的に規定したほうがいいでしょう)によって納期を守ることができなくなった場合は、相当期間納期を延長できる旨の特約をしておいたほうがいいです。
Point 7 危険負担に関する条項は?
  • 不可抗力の場合でも、危険はどっちかが負担しなければいけません。売主としては、引渡しをもって危険負担を買主に移転させる旨の特約をしておいたほうがいいでしょう。
Point 8 瑕疵担保責任に関する特約はありますか?
  • 瑕疵担保責任は無過失責任なので、極力保証期間の短縮化をはかるべきです。売主としては、瑕疵担保期間満了後は有償のサポートサービスなどに切り替えたほうがいいでしょう。
Point 9 所有権留保特約は付いている?
  • 債権保全の観点から「商品の所有権は、売主が商品代金の完済を受けたときに買主に移転する」旨の特約が必要です。これによって、買主倒産にともなう損害を最小限に食い止めることが可能となります。
Point 10 損害賠償の限度額は設定されていますか?
  • 取引の対象がソフトウェア等の場合、製品の特殊性から損害が莫大なものになる危険性があります。売主としては、「契約金額をもって賠償限度額とする」という特約をしておいたほうがいいでしょう。
Point 11 金銭支払を怠ったときの損害賠償金の特約は?
  • 金銭支払債務を怠った場合、法律上は民事取引の場合年5%、商事取引の場合年6%請求できると定められています。
  • 金利が安いときはこれでも問題ないのでしょうが、金利が高い場合、お金を支払う側にとっては、銀行から借入れして支払うより違約金を払っておいたほうが得...と考えがちになります。
    したがって、あらかじめ妥当な賠償額を契約書に定めておいたほうがベターです(あまり高すぎると無効とされる可能性があるので注意)。
Point 12 商品の納入を怠ったときの違約金の特約は?
  • Point 12と表裏の関係ですね。「商品の納入を怠ったときは、納入期日から納入日までの間、1日○円の割合による違約金を支払う」と定めます。
Point 13 無催告解除の特約はありますか?
  • 相手の契約違反がはなはだしく、たとえ催告しても約束どおりに実行する可能性がほとんどない場合、催告しなければ契約を解除できないのであれば、解除時期を失するという実際上の不利益が大きくなるので、無催告解除の特約を設けるべきです。
Point 14 期限の利益喪失条項はありますか?
  • 相手方が契約違反したり、不渡処分をうけたり、信用状態がきわめて悪化したときは、残金全額を「すぐに」支払ってもらわなければなりません。売主にとって、期限の利益喪失条項は必須です。
Point 15 担保提供や連帯保証人の条項も、相手によっては必要です
  • 取引相手によりますが、担保提供や連帯保証人の条項も検討しましょう(相手が大手の優良企業なら、かならず削除を要求されるでしょうが...)。
Point 16 裁判所の合意管轄の特約はありますか?
  • 相手方の住所地を管轄する裁判所へ訴えるのは多額のコストがかかります。できれば自社の本社所在地を管轄する裁判所に特約しておいたほうがベターです。
Point 17 契約書の形式は?
  • 一般的な契約書は、
    (1) 表題 売買契約書、業務委託契約書、等々・・・・
    (2) 前文 株式会社○×(以下「甲」という。)および株式会社△□(以下「乙」
    という。)は・・・・
    (3) 本文 第1条、第2条、第3条・・・・
    (4) 末文 本契約締結の証として甲乙記名押印の上各自1通を保有する、等
    (5) 作成年月日 契約締結日を記載します(忘れずに!!)。
    (6) 当事者の住所
      社名(商号)
      代表資格+代表者氏名
      +押印
    社名や代表資格(代表取締役)が抜けていると、対会社の契約なのか、対個人の契約なのか分からなくなってしまいます。
    また、商業登記簿で代表権者をあらかじめ確認しておきましょう。
    できれば署名押印、駄目でも記名押印が必要です。なお、取引相手によっては実印+印鑑証明での契約締結も検討しましょう。
    の順で構成されます。
  • 誰が読んでも同じ解釈ができるように書かれていますか。小説ではありませんので、行間を読ませる(読まれる)ような書き方はいけません。契約書は後日、裁判上重要な証拠となりうるものであることを肝に銘じましょう
    内容に矛盾がないのであれば、同じような内容を繰り返し書いても、マイナスにはなりません。
  • 多少クドくても「甲は乙に対し…」のように主客を明確にしたほうがベターです。契約書はあくまでも、お互いの権利・義務を明確にするためのものだからです。
  • 「甲」「乙」で記述すると、途中で甲乙が逆になってしまうことがあります。よくあることですので、気を付けましょう。最近は「甲」「乙」ではなく、「売主」「買主」とか「○○社」「△△社」のように記述している契約書も少なくありません。
  • 契約締結日は正確に記載されていますか(しっかりとした契約書であるにもかかわらず、契約締結日や本文中の締め支払の日がブランクになっているケースが結構見受けられます)。日付が虚偽であると文書全体の信頼性を損なってしまう可能性があるので、要注意です。
Point 18 最後に「法律用語を間違って使ってませんか?」
  • 「および」と「ならびに」、「または」と「もしくは」等々…、法律用語を間違って使っていると結構恥ずかしいですよ。自信の無い方は「法律用語のキソ」を参考にしてください。
  • 第3条が2つあったり、第4条がなかったり・・・条文の番号を正確に付けていますか。
    項番号が(1),(2),...だったのが、途中でマル1,マル2,...になっていたり・・・。
  • 誤字脱字にも気を付けてください。契約書は後日、裁判上の重要な証拠書類となるものです。
以 上
「営業活動の法律シリーズ@ 契約の知識」神部正孝著(商亊法務研究会) cover

※「あどみん関連書籍のススメ」もぜひご覧ください。


ポイント1
 契約交渉では、とにかく
「主導権を握る」ことが重要です。
 「契約書まで用意してきてくれて、手間がはぶけてラッキー!」なぁんて感謝しちゃいけません。
相手方が契約書を用意してきたら「当社に不利な内容の特約があるのでは?」と疑ってみる必要があります。
 内容を検討のうえ、契約書の対案を提示する(内容の修正したり、別途覚書を締結する)くらいの慎重な姿勢でないといけません。

ポイント2
 契約は、基本的に
「申込み」と「承諾」とが合致して成立します。
 双方の意思の合致さえあれば、
口頭であっても契約は成立します(ただし契約内容が明確でない、証拠が残らないといった問題は残りますが...)。
 
注文書と注文請書は1セットで契約書といえるものですから、注文する場合は、必ず注文請書を受領しましょう。

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