法律用語のキソ     by あどみん編集部
法律用語を正しく使っていますか?

 及び【および】・並びに【ならびに】   and


大勢の法律家が列席したとある結構披露宴でのこと・・・。
 ある人が「新郎並びに新婦は…」と祝辞をやりだしたところ、

「新郎並びに新婦ではないっ! 新郎及び新婦が正しいのダ」

という野次が飛び交ったとか。
 これは真偽のほどは定かでない笑い話ですが、法律家はこれ位、「及び」と「並びに」を厳格に使い分けています。

「及び」「並びに」は、どちらも並列的接続詞として使われます。「および」「ならびに」とひらがなで書いても同じ意味です。
 まず、結合される語が同じ種類だったり、同じレベルのものの場合は「及び」を使い、

A 及び B

となります。たとえば、

リンゴ
及び
ミカン


となります。同じ種類の語を2以上並べるときは、「、」でずら〜っと結合して、最後に「及び」をもってきて、

A、B及びC

となります。たとえば、

リンゴ
ミカン
及び
バナナ


です。3つ以上になると、

A、B、C及びD

となります。たとえば、

リンゴ
ミカン
バナナ
及び
メロン


となります。

つぎに、結合される語の種類(たとえば果物と野菜など)が違っていたり、別のレベルのものの場合は、「並びに」を使い、

(A及びB)並びにC
リンゴ
及び
ミカン
並びに
キャベツ


ですね。また、

(A、B及びC)並びに(D及びE)
リンゴ
ミカン
及び
バナナ
並びに
キャベツ
及び
ニンジン


となります。前のかたまりが「果物グループ」、後ろのかたまりが「野菜グループ」、この2つのかたまりをつなげているのが「並びに」です。

結合される語が3段階以上になる場合は、一番小さな結合に「及び」を使い、それ以上の段階には「並びに」を使い、

(((A及びB)並びにC)並びにD)

となります。たとえば、

リンゴ
及び
ミカン
並びに
キャベツ
並びに
食パン


 一番小さなかたまりが「果物グループ」で、「果物グループ」とキャベツ(野菜グループ)との連結が第2段階(生鮮食品グループ)、「生鮮食品グループ」と食パンとの連結が第3段階(加工食品グループ)になっています。
ちなみに、小さな連結を「小並び」、大きな連結を「大並び」といったりします。

英語の「及び」「並びに」は、いずれも「and」です。したがって、英文契約書に「and」が出てきたときは、「及び」なのか「並びに」なのかを的確に読まなくてはいけません。

A and B (A及びB)
A,B and C (A、B及びC)
A,B,C and D (A、B、C及びD)
A and B,and C (A及びB並びにC)
A,B and C,and D (A、B及びC並びにD)

 この場合、「* and *」を「及び」と訳し、「,and *」を「並びに」と訳します。


 又は【または】・若しくは【もしくは】   or


「又は」「若しくは」は、どちらも選択的接続詞として使われます。「または」「もしくは」とひらがなで書いても同じ意味です。
 まず、結合される語が同じ種類だったり、同じレベルのものの場合は「又は」を使い、

A又はB

となります。たとえば、

リンゴ
又は
ミカン


となります。
 同じ種類の語を2以上並べるときは、「、」でずら〜っと結合して、最後に「又は」をもってきます。

A、B又はC

ですね。たとえば、

リンゴ
ミカン
又は
バナナ


です。3つ以上になると、

A、B、C又はD

たとえば、

リンゴ
ミカン
バナナ
又は
メロン


となります。

つぎに、結合される語の種類(たとえば果物と野菜など)が違っていたり、別のレベルのものの場合は、小さな選択的接続に「若しくは」を、大きな選択的接続に「又は」を使います。たとえば、

(A若しくはB)又はC
リンゴ
若しくは
ミカン
又は
キャベツ


ですネ(「及び」「並びに」の場合とは逆なので注意!!)。また、

(A、B若しくはC)又は(D若しくはE)
リンゴ
ミカン
若しくは
バナナ
又は
キャベツ
若しくは
ニンジン


となります。前のかたまりが「果物グループ」、後ろのかたまりが「野菜グループ」、この2つのかたまりをつなげているのが「又は」です。

結合される語が3段階以上になる場合は、一番大きな選択に「又は」を使い、それ以下の段階には「若しくは」を使います。

(((A若しくはB)若しくはC)又はD)

 たとえば、

リンゴ
若しくは
ミカン
若しくは
キャベツ
又は
食パン


 一番小さなかたまりが「果物グループ」で、「果物グループ」とキャベツ(野菜グループ)との連結が第2段階(生鮮食品グループ)、「生鮮食品グループ」と食パンとの連結が第3段階(加工食品グループ)になっています。

なお、英語の「又は」「若しくは」は、いずれも「or」です。したがって、英文契約書に「or」が出てきたときは、「又は」なのか「若しくは」なのかを的確に読まなくてはいけません。

A or B (A又はB)
A,B or C (A、B又はC)
A,B,C or D (A、B、C又はD)
A or B,or C (A若しくはB又はC)
A,B or C,or D (A、B若しくはC又はD)



 以上【いじょう】   not less than
 超える【こえる】   more than


どちらも一定の数量を基準として、それよりも大きいことを示します。ただし、「以上」は基準になる数量を含みますが、「超える」は基準となる数量を含みません。これが違いです。
 たとえば、「100円以上」の場合は100円を含みますが、「100円を超える」の場合は100円は含まれず、101円からです。

英語の場合、「以上」は or moreor overor above や、not less than を使います。
  ・one hundred (100) yen or more
  ・one hundred (100) yen or over
  ・one hundred (100) yen or above
  ・not less than one hundred (100) yen

英語の場合、「超える」は more thanin excess ofover を使います。
  ・more than one hundred (100) yen
  ・in excess of one hundred (100) yen
  ・over one hundred (100) yen


 以下【いか】    not more than
 未満【みまん】   less than


どちらも一定の数量を基準として、それよりも小さいことを示します。ただし、「以下」は基準になる数量を含みますが、「未満」は基準となる数量を含みません
 たとえば「100円以下」の場合は100円を含みますが、「100円未満」の場合は100円は含まれず、99円からです。

英語の場合、「以下」は or lessor below や、not more than を使います。
  ・one hundred (100) yen or less
  ・one hundred (100) yen or below
  ・not more than one hundred (100) yen

英語の場合、「未満」は less thanin short of を使います。
  ・less than one hundred (100) yen
  ・in short of one hundred (100) yen


 その他【そのた】・その他の【そのたの】


「その他の」は、前にあるものが後に続くものの例示であることを示します。有名な日本国憲法第9条第2項の「…陸海空軍その他の戦力」がそれです。「陸海空軍」は「戦力」の単なる例示というわけです。
 一方、「その他」は、前にあるものと後ろにあるものが並列の関係にあることを示します。たとえば「賃金、給料その他これに準ずる収入」では、「賃金」と「給料」と「これに準ずる収入」が and(=及び) の関係にあるわけです。

つまり、「Aさんその他の美人に囲まれて光栄です。」だとAさんは美人ということになりますが、「Aさんその他美人に囲まれて光栄です。」だとAさんは「必ずしも」美人ではないことになります。

「の」

のあるなしが、このような差をもたらすことは日常では理解しにくいことですが、法律用語としては、こうなっているのです。


 署名【しょめい】・記名【きめい】   signature


「署名」は、自分で自分の氏名を書く、つまり自署(=サイン)することです。
 一方「記名」は、署名以外の方法で氏名を記載すること、たとえばゴム判を押したり、ワープロで打ったりすることです。


「署名」「記名」どちらの場合もそうですが、企業間で契約を締結する際には、
 (1) 社名(商号)
 (2) 代表資格(代表取締役)+個人の氏名
の有無をちゃんとチェックする必要があります。社名や代表資格が抜けていると、対会社の契約なのか、対個人の契約なのかわかりません。「記名」の場合はさらに代表取締役印が必要になります( -->実印を参照 )。


 実印【じついん】・認印【みとめいん】・銀行印【ぎんこういん】   seal
 拇印【ぼいん】・書判【かきばん】


「実印」とは、あらかじめ市町村等に登録がしてあって、印鑑証明書の交付を受けられる印をいいます。会社の場合は、会社の登記がしてある法務局に、会社の代表者として届けている印になります。
 印鑑証明書は、登録してある実印の陰影を、区役所や市町村役場または法務局が公に証明してくれるので、契約書の署名欄(記名欄)の印影が印鑑証明書の印影と一致すれば、その実印の名義人が作成したものと推定されます。

「認印」とは、実印以外の印をいいます。契約書に押印されたものが認印の場合、押印者を特定する力は、実印よりも弱くなります。その認印が、文房具店の店頭で売られているようなものだったら、さらに弱くなります。

「銀行印」は、認印の一種ですが、銀行との取引、手形・小切手の振り出しに使用する印として銀行に届け出た印をいいます。
銀行取引約定書には、銀行印が押されていれば、たとえ権限のない者が押印したものであって、それにより預金者が損害を被ったとしても、銀行は一切責任を負いませんよ、という規定があります(預金者にとっては、とっても不利な規定ですよね)。

「拇印」とは、指先(普通は親指か人差指を使います)に朱肉をつけて指紋を残すことをいいます。指紋鑑定によれば、押印者を特定する力は、非常に強いものといえます。

「書判」とは、自分の姓や名前を手書きで書き、ぐるっと丸で囲むもので、サインの一種です。


 契印【けいいん】・割印【わりいん】・訂正印【ていせいいん】
 捨印【すていん】・消印【けしいん】


「契印」とは、契約書等が2枚以上にわたる場合に、それらが一連一体の文書であることを証明するためのもので、これによって勝手に差し替えられたり、抜き取られることを防止します。
 文書が一体か否かを決めるのは、あくまでも契約締結者ですので、契印には、契約書に記名押印したときに使った印を使います。
 よく「契印」のことを「割印」と呼んでいる人がいますが(こういう人は何でもかんでも割印と呼ぶんですね)、まったく別物です。恥ずかしいのでやめましょう。
 なお、契印の押し方としては、(1)ホッチキス等で綴じたあとに、両ページの境目(折り込み)の部分に押印する方法と、(2)袋とじにして、帯と表紙との間に押印する方法があります。


 (1)は最も一般的な方法ですが、すべての境目に押さなければならないため、ぶ厚い契約書の場合は面倒ですし、印影がきれいに写らなくなる(印影は鮮明であることが重要です)という欠点があります。一方、(2)の方法は「袋とじは絶対外せない」ということを前提としたものです。

「割印」とは、たとえば契約書の原本を2通作ったときなどに、2つの契約書にまたがって押印することで、複数の独立した文書の関連性を示すためのものです。「独立した文書」という点で契印と異なります。


「訂正印」とは、契約書などを訂正したときに押印するもので、訂正個所が少ないときによく使われます(訂正個所が多いときは汚くなってしまいますので、別途「訂正覚書」を作成するのが一般的です)。
 文書を訂正するか否かを決めるのは、あくまでも契約締結者ですので、契印と同様に、契約書に記名押印したときに使った印を使います。
 訂正印の押し方としては、(1)訂正個所あるページの欄外に押印する方法と、(2)訂正個所に直接押印する方法があります。


 (1)は最も一般的な方法ですが、あとでそのページについては何度も訂正できてしまうという欠点があります。一方、(2)の方法は、地の文書が読みづらくなるという欠点がありますが、(1)の方法よりも安全だといわれています。
 なお、訂正文字数は、あとから改竄されないようにするため、以下のような「(多角)漢数字」を使用するのが一般的です。

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 100 1,000 10,000 100,000,000 なり
弐(貳)


「捨印」は、あらかじめ欄外に押印しておくことによって、後からいつでも訂正できるような状態にしておくことです。つまり、事前に訂正印を押しておくことですね。
 当然、捨印を押す段階では、どこを訂正するのか分かっていませんので、後日相手方にどのような訂正をされても文句を言えなくなってしまいます。勝手に契約書を書き換えてもいいですよ、といっているようなものです。ただちに追加・訂正ができるためとても便利ですが、非常に「危険」です。当然のことのように捨印を要求してくる契約相手がいますが、よっぽど信頼している相手(役所の手続きとか、顧問弁護士など)でなければ、安易に押印してはいけません。できれば避けることが賢明です。


契約書のような課税文書(契約書すべてが課税文書とは限りません)を作成すると、印紙税という税金が課せられます。この税金を納付するために契約書に貼付した印紙を二度と使えないようにするため、貼付した印紙と本紙(地)にまたがって押印するのが「消印」です。
 契約締結者が双方で消すのが一般的ですが(契約書は何年もの間保管されるので、双方で消した方が見栄えはいいのですが)、あくまでも貼付した印紙を二度と使えないようにするためですので、どんなハンコ(シャチ○×とか…)で消しても問題ありません。ハンコがなければ、ボールペンか何かでピピッと書いて消しても構いません。
 印紙の消印と契約書の効力は全然関係がありません。あくまでも印紙税法上の問題です。契約締結者全員のところを駆けずり廻り、大慌てで消印を貰いに行く営業さんがいますが、そんなことをする必要は全然ないのです。


 原本【げんぽん】・謄本【とうほん】・抄本 【しょうほん】


「原本」とは、作成者がその内容を確定的に表したものとして最初に作成した書類のことをいい、「謄本」は原本の完全なコピー、「抄本」は原本を抜粋したもののコピーをいいます。


 場合【ばあい】・とき・時・際【さい】


「場合」「とき」は、共に、どういうことがあったらどうするというように、仮定的な条件を示す用語として使われます。通常は「○○○された場合、〜」とか「×××したときは、〜」のように、どちらを使っても構いません。
 ただし、仮定的条件が2つ重なる場合には、大きい条件には「場合」を、小さい条件には「とき」を使います。つまり、

○○○された場合、
×××したときは、〜
×××しなかったときは、〜

となります。

つぎに漢字の「時」ですが、これは平仮名の「とき」と異なり、文字どおり時間や時刻が問題になる場合にのみ使われ、仮定的条件を示す場合は使われません。「解除の通知を受けた時から○日以内に〜」のように使われます。

「際」については、あまり厳密に使われていないようです。せいぜい「おり(折)」という程度の用語です。


 から・より


「から」は、起点を示す場合に使われます。たとえば「買主から売主に代金を支払う」のように使います。一方「より」は、比較を示す場合に使われます。たとえば「損害の額が請負金額より大きい場合は、〜」のように使います。


 直ちに【ただちに】・速やかに【すみやかに】・遅滞なく【ちたいなく】


いずれも「いますぐ」というような時間的即時性を要求する用語ですが、若干ニュアンスの違いがあります。うまく使い分けましょう。

「直ちに」は、このなかで一番急迫度が高く、「何をおいても、すぐやれ!!」という趣旨の場合に使われます。
 「速やかに」は、「直ちに」よりも急迫度が低く、「できる限り」といった訓示的意味合いを示す場合に使われます。法的拘束力も弱く、違反しても即違法とはならないというようなニュアンスで使用されます。
 したがって、相手側に対しては「直ちに」という語を使い、自分に対しては「速やかに」という語を使っている契約書も結構ありますので、気を付けましょう。
「遅滞なく」は、合理的または正当な理由があれば、多少の遅れは認められると解されています。事情の許す限り速やかに、といった感じでしょうか。


 適用する【てきようする】   apply
 準用する【じゅんようする】   mutatis mutandis


「適用する」とは、特定の法令の規定を、特定の事項(事件)に対してそのまま働かせることをいいます。

「準用する」とは、ある事項(事件)に対する法令の規定を、これと本質の異なる他の事項(事件)に対して、一定の変更を加えた上であてはめて(読み替えて)働かせることをいいます。
 たとえば「○○の場合には、第○○条の規定を準用する。」とか、「第○○条の規定は、○○の場合について準用する。」のような使われ方をします。いちいち準用されている条文の内容を見に行かなければならないので、慣れないうちは結構大変です(契約書上ではあまり使われませんが・・・)。


 解除【かいじょ】・解約【かいやく】   termination


ともに、有効に成立した契約を終了させる意思表示ですが、「解除」は、契約当初にさかのぼって契約の効力を失わせることをいいます。相手方に契約違反などがあった場合によく使われます。

第○条
甲および乙は、相手方に次の各号に掲げる事由の一が生じたときは、なんらの催告なく、ただちに本契約を解除できるものとする。
@重大な過失または背信行為があったとき。
A支払いの停止があったとき、または仮差押、差押、競売、破産、民事再生手続開始、会社更生手続開始、会社整理開始もしくは特別清算開始の申し立てを受けたとき。
B手形交換所の取引停止処分を受けたとき。
C公租公課の滞納処分を受けたとき。
D財産状態が悪化し、またはそのおそれがあると認められる相当の事由があるとき。


一方「解約」とは、過去にさかのぼって契約の効力を失わせるのではなく、解約の時から将来にむかって契約の効力を失わせることをいいます。賃貸借契約の途中でアパートから出て行きたい場合に、大家さんに解約の申し入れをして、それ以降の賃貸借関係を消滅させる場合に使われますね。

第○条
甲および乙は、○ヶ月前までに相手方に書面にて申し入れることにより、本契約を解約できるものとする。解約にともなう措置については、甲乙協議の上定めるものとする。


 ただし、現実には混同して使用されたりしますので、注意しましょう。少なくとも、自分で契約書のドラフトを作成する場合は、間違えないで下さいね(結構恥ずかしい…)。


 解除条件【かいじょじょうけん】・停止条件【ていしじょうけん】


「解除条件」とは、「○○○したら契約の効力が消滅する」などのように、その条件が満たされてしまうと契約の効力を失ってしまうことをいいます。解除条件付き契約の例としては、以下のものがあります

第○条
甲および乙は、相手方に次の各号に掲げる事由の一が生じたときは、なんらの催告なく、ただちに本契約を解除できるものとする。
@重大な過失または背信行為があったとき。
A支払いの停止があったとき、または仮差押、差押、競売、破産、民事再生手続開始、会社更生手続開始、会社整理開始もしくは特別清算開始の申し立てを受けたとき。
B手形交換所の取引停止処分を受けたとき。
C公租公課の滞納処分を受けたとき。
D財産状態が悪化し、またはそのおそれがあると認められる相当の事由があるとき。


一方「停止条件」とは、「○○○したら契約の効力を生ずる」のように、条件を満たしたときに契約の効力が発生することをいいます。以下は、停止条件付き契約の一例です。

第○条
甲に債務不履行があったあった場合、代物弁済として、甲所有の以下の不動産の所有権は乙に移転するものとする。


 善意【ぜんい】   good faith, bona fide
 悪意【あくい】   bad faith


同じ用語であっても、日常用語として使われているときと、法律用語として使われているときとでは意味が違うものがあります。「善意」と「悪意」はその代表格です。

「善意」とは、一般に「善良な心」を意味し、「アイツは善意でやったんだからさ、勘弁してあげなよ」のように使用されますが、法律用語として使用されているときには、「ある事実を知らないこと(=不知)」を意味します。たとえば「善意の第三者」というのがありますが、これは当事者が知っていることを知らない者をいい、法律上保護されるケースが多いといえます。

一方「悪意」は、一般に「他人に害を与えようとする心」を意味し、「決して悪意でやった訳じゃないんだからさぁ」のように使用されますが、法律では「ある事実を知っていること」という意味になります。「悪意の第三者」は「善意の第三者」と異なり、第三者であっても法律上保護を受けられない場合が多いようです。

このように日常用語での「善意」「悪意」は道徳的・感情的な善悪を意味しますが、法律用語では、道徳・感情と全く関係のない用語として使用されます。


 者・物・もの


「者」とは、法律上の人格をもつもの(自然人や法人)を表すときに使われます。

「物」とは、権利の対象となる物件を表すときに使われ、「者」と区別するため「ブツ」と呼んだりします。

ひらがなの「もの」は、「者」や「物」以外のものを表すときに使われます。


 所・ところ


漢字の「所」は、「甲は、乙の営業所のある所に商品を納入する。」のように、特定の場所を示す場合に使われます。

ひらがなの「ところ」は、「第○条に定めるところにより〜」のように、他の規定を引用したり、前の言葉を受けて次の言葉に続ける場合に使われます。


 強行規定【きょうこうきてい】・任意規定【にんいきてい】
 取締規定【とりしまりきてい】


法律(民法、商法等)の条文の「種類」です。

「強行規定」とは、公の秩序に関する規定です。当事者間の意思に左右されずに適用され、強行規定に反することを特約しても(契約書のなかに書いても)「無効」になります。
 民法の「物権法」や「身分法」は原則として強行規定になっています。

逆に「任意規定」とは、公の秩序に関しない規定です。当事者の意思が不明な場合に備えて法がおいた、紛争のよりどころとなる規定です。任意規定に反することを特約しても(契約書のなかに書いても)「無効にはならず特約が優先」されます。
 民法の「債権法」は原則として任意規定になっています。

契約書を作成する意義は、任意規定と異なる合意をした場合に、それを明確にしかつ今後の紛争に備えて書面化することにあります。任意規定よりも有利な特約をしておくことが重要(これが契約交渉です)で、法律にすでに定められていること(任意規定)を何ページにもわたって書いても意味がない! のです(市販の契約書には、結構こういうのが多いんですね…)。

強行規定>特約(契約)>任意規定
 強行規定→公の秩序にかんする規定。当事者間の意思に左右されずに適用される。
 任意規定→当事者の意思が不明な場合に備えて法がおいた紛争の拠り所となる規定。


ちなみに「取締規定」というものもありますが、これは行政上の目的により私法上の行為を制限する規定です。ある行為を制限し禁止することを定めたもので、それに反してなされた法律行為の効力には、影響を及ぼしません。
 たとえば、無届けで貸金業を行うと貸金業規制法に反することになりますが、だからといって、その業者がお客さんとした貸金契約は無効にはなりません。貸金業規制法は、あくまでも無届けの貸金業者をなくそうという、行政上の目的による「取締規定」だからです。


 看做す(見做す)【みなす】・推定する【すいていする】


いずれも日常用語ではあまり使われませんが、条文ではわりと頻繁に目にします。

「看做す(見做すとも書かれます)」は、実際には性質が違うものであっても、一定の法律関係においては同一視する場合(そうじゃないけど、そういうことにしてしまおう)に使われます。
 推定するとよく比較して使われますが、重要なのは、「推定する」 とは違って覆らないということです。
 たとえば、民法第753条では、「未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。」といっていますが、これは、未成年者が婚姻をすれば、一定の法律関係においては成年者として取り扱い、(実際は未成年者であるにもかかわらず)もはや未成年者として取り扱わないということです。婚姻後は、いくら「俺は未成年者だ!」と頑張っても(反証をあげても)ダメ、有無をいわせず成年者として取り扱われます。
 つまり、法律の力で「白」を「黒」といいくるめてしまう訳ですね。

一方、「推定する」は、一応このように取り扱うが、もし反対の証拠を出せば、それを覆すことができる場合に使われます。逆にいえば、反証がない限り推定が働くことになります。
 たとえば、民法第772条第1項は、「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。」と規定しています。健全な婚姻関係にある夫婦の間に生まれた子は,その夫婦を父母としていると考えるのが自然ですが、「いや、その子は俺の子じゃない。妻が私以外の男と性交渉して懐胎した子だ。証拠もある!」と主張して、その証拠をあげれば、自分の子として扱われることはありません。



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